生活保護葬の香典とお布施

生活保護葬(別名:福祉葬)は亡くなった方が生活保護受給者である場合、葬式の喪主・施主が生活保護受給者の場合に葬祭扶助制度を利用して行われる葬式のことです。 ここでは一般的な葬式とは違った福祉葬をおこなううえでの制限や香典、お布施などの知識に関して説明します。
生活保護葬(福祉葬)では家族葬ができない?その理由とは。
福祉葬を行う場合でも家族や親戚を集めた家族葬にしたいと考える方は多いと思います。しかし、福祉葬を家族葬の形ですることは現実的に考えると難しいです。
その理由は、家族葬をするためには福祉葬の葬祭費用だけでは足りないからです。 福祉葬は生活保護受給者に関係する葬儀の費用を国が代わりに負担してくれるという葬祭扶助制度を利用した葬式です。
そして福祉葬では、葬祭扶助制度で給付される金額内で葬儀を行う必要があります。 給付額は大人で20万円ほどのため、家族葬をするためには足りないのです。 また、施主・喪主が給付額に上乗せして、自費で家族葬を行ってしまうと葬儀費用の支払い能力があることを認められて葬祭扶助制度が適用されない場合があります。
家族葬は10人から30人規模で行う葬式です。家族や親族のみが参列します。しかし家族葬は通夜、通夜振る舞い、告別式、火葬式、精進落としといった一般的な葬式の内容と変わらないものであるため、費用が高いです。
福祉葬では、火葬式(直葬)が一般的です。 火葬式とは、通夜や告別式を行わず、納棺後すぐに火葬するという葬儀のことです。 このような簡易的な葬式にすることで葬儀費用を葬祭扶助制度の給付金額内におさめることができます。生活保護葬(福祉葬)でのお布施はどうなるのか?
葬儀の際にはお寺の住職・僧侶を呼んで読経、戒名などをしてもらいます。そのお礼として渡すお金がお布施です。
福祉葬ではお布施は葬祭扶助制度の対象外となっており、給付金が受けられません。生活保護法18条によれば、福祉葬における給付金は、「検案、死体の運搬、火葬又は埋葬、納骨その他葬祭のために必要なもの」に対して払われます。
読経や戒名がなくても、火葬、埋葬といった葬儀は行えるので、必要最低限ではないお布施には適用されないのです。
しかし、実態としては全国一律の基準があるわけではなく各自治体によって対応が様々です。火葬式しか対応していない自治体や僧侶派遣・一般戒名(法名・法号)・火葬料・永代供養に対応している自治体もあります。福祉葬を行う場合は事前の相談で、しっかりと確認してください。
生活保護葬(福祉葬)での香典は?
生活保護手帳とは
生活保護手帳は、各自治体の生活保護担当の職員が持っているバイブル的な手帳です。 生活保護に関する基本知識、業務内容が記されていて、生活保護法に基づきどういう対応をすべきなのかが示されています。 ベテランのケースワーカーも手帳をうまく解釈して困難事例に対応しているそうです。 生活保護受給者が持っていても損がない一冊です。
香典が没収されない理由は
生活保護制度ではその世帯に入ったお金は原則すべて収入とみなされます。 収入の額により、給付される生活保護受給金額が変わることや、場合によっては受給要件を満たさなくなる可能性もあるため、生活保護受給者にとって収入がどれくらいなのかは非常に重要です。(収入が多ければ、給付額は下がります。) 冠婚葬祭などの祝い金や香典など社会通念上、収入として認めることが適当でないものは収入とはなりません。これを認定除外といいます。 香典については、「収入認定外」のお金となりますのでそのまま受け取ることができます。 ですから、生活保護受給者の葬儀での香典を市が没収するなどの情報は全くの誤解です。
香典の相場は
福祉葬などの一日葬に参列する際の香典の相場は親戚以外の場合、5000円ほどが目安です。 これは一般的な葬儀に参列するときと変わりません。 親戚の場合は以下が参考金額です。 金額について上下があるのは、参列者の年齢が高いと金額も高くなるためです。
- 祖父母 1万円~5万円
- 親 5~10万円
- 兄弟姉妹 3~10万円
- おじ・おば 1~3万円
- いとこなど上記以外の親戚 1~2万円
香典を持参しても収入認定外ですので、主催者に迷惑がかかることはありません。 香典を持参するのは通夜か告別式とされていますが、福祉葬ではそのどちらもないという場合があります。そのため、火葬式(直葬)の場で渡すか、郵送、自宅に訪問して渡すなどする必要がある点には注意してください。
香典返しについて
では、香典のお返しはどうするのでしょうか。 故人が生活保護を受けていた場合、香典返しを行うのは家族なので、その方が生活保護を受けていないのであればお返しする必要があるでしょう。 これは親族、親族以外を問わずに行うことが一般的です。 相場は、受け取った額の3分の1程度と考えてください。 お供えの生花や果物に対するお返しの必要はありません。 お礼状や挨拶状といった返礼をすることが良いとされています。
生活保護葬(福祉葬)には参列しても良いのか?
福祉葬は香典を持参できるということですので、親族以外の方も参列することができます。 ですが、福祉葬はとても簡素で参列者を迎える設備が十分でないことがあります。 葬祭扶助制度の給付金内で葬儀をおこなうのですからこれは仕方ありません。 火葬式(直葬)の形式で進められることが多いので、参列者の控室などはなく、おもてなしはできないと思います。
まとめ
福祉葬における香典やお布施などの知識を説明しました。生活保護受給者に関係する葬儀の場合、注意すべきポイントがありました。 主なポイントは、 通夜、告別式がある家族葬は葬祭扶助制度の給付金額の関係から行うことは難しい。 読経、戒名などに対するお布施は葬祭扶助制度の対象外。 福祉葬での香典は、生活保護受給者の収入認定外のため受け取ることが可能で、自治体に没収されることはない。 香典、香典返しの相場は一般の葬儀と変わらない。 などです。 不明点があれば、福祉葬を行う主催者の場合は自治体の福祉事務所などで担当者と葬祭扶助制度について確認しながら葬儀をはじめることが重要です。
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